炭鉱夫を守る風を絶やさぬために/ Antique Biram's Improved Anemometer

英国アンティーク、箱入りの風速計。



英国の大きなアンティークフェア。

屋外にも沢山のディーラーが品物を並べておりますが、大きな倉庫のような場所に、ジュエリーや、お値段が高目なアイテムを扱うディーラーが軒を連ねるところもあります。

その中の1軒。

沢山の望遠鏡や双眼鏡、コンパスや機器類など「メカもの」を扱う小さなストールがあります。店主は小柄な眼鏡のおじ様。話し出せば品物についての蘊蓄がとまらない、愛すべき、そして信頼すべき店主です。

先般訪れた際にも顕微鏡をはじめいろいろなアイテムをみせてもらい、素晴らしい品々を手に入れてウキウキと支払いを済ませよう・・・としたときに、ふと目にとまったものがありました。ストールのやや奥、箱に整然と納められたマニア垂涎のアンティーク機器が並ぶ中に、ちょっと異彩を放つ、まあるい風車。

「ちょっと見せてもらってよいですか?」

お願いすれば、素早く細かな動きで手元に持ってきてくれました。

『「Anemometer(風速計)」だよ。「Coal Miner(炭鉱夫)」のためのもの。「Ventilator(換気)」が無いと死んでしまうからね。』その言葉を聞いて、そっと風を吹けば、思いがけず軽やかにくるくると羽が回りだし、あっというまに手に入れたくなってしまいました。



産業革命に欠かせなかったもののひとつ、石炭。


英国では古くは燃料と言えば木炭でした。17世紀に鉄工業が盛んになると、鉄鉱石を溶解して銑鉄をつくるための木炭が大量に使用されるようになり、くわえて建築や造船用材としても木材の需要が高まったため、またたく間に英国のの森林資源は枯渇することとなっってしまいます。

この木炭にかわる燃料として注目されたのが石炭でした。コークス製鉄法の発明により石炭は鉄工業の原料とされるようになり、さらに蒸気機関の燃料として用いられるようになったため、急激に増産されることになりました。17世紀後半、全世界の石炭生産量のほぼ85%を英国が占めていたといいます。これはそのまま18世紀の産業革命へと進んでいくことになります。のちに第2次世界大戦の前後から石油が登場し、エネルギーの主役となるまで、石炭の繁栄は続きました。



そんな背景をもつ英国の炭鉱。

そこでは落盤をはじめガスや水など、多くの危険がありました。空気の流れを管理し、炭鉱夫を守るために、このような風速計は必要不可欠なものであったことは想像に難くありません。吊り下げ型であることも、炭鉱の壁に下げて物流の邪魔にならないための作りなのではないでしょうか。





さて、もう少しお品物を見てみましょう。


正方形に近い形の木箱を開けば、蓋裏には以下の内容のシールが貼られています。

H. JASPER REDFERN,
OPTICIAN,

55 & 57, SURREY STREET,
AND
104 & 106, NORFOLK STREET,
SHEFFIELD.



また、風速計の真ん中部分には目盛りとともに以下の文字がみられます。

No.369
H.JASPER REDFERN SHEFFIELD



つまり、この風車はシェフィールドにあった「H. JASPER REDFERN/H.ジャスパー・レッドファーン」社によるもの、ということがわかります。

同社は1871年ヨークシャーで生まれた「Henry Jasper Redfern/ヘンリー・ジャスパー・レッドファーン」によって設立されました。彼は家族とともにロンドンへ移った後、さらにシェフィールドへ移り、眼鏡技師、写真家、映画製作者、展示会主催者、プロモーターなどとして事業を行っていました。1900年、彼の会社はシェフィールドのノーフォークストリート 104-106 番地、及び1901-1907年にサリーストリート53-57番地にあったようですので、おそらくこのお品物は1900年代頃のものと考えてよさそうです。


また、他に2タイプの風速計が掲載されている説明書が箱に残されており、該当の風力計は「Biram's Improved Anemometer」として紹介されています。ただ、製造元などの情報は入っていませんでした。





さて、実は英国のSCIENCE MUSEUM GROUPのサイトに、非常に似た風速計が掲載されていましたのでご紹介しておきます。

Hand anemometer, Biram type, 1870-1876
https://collection.sciencemuseumgroup.org.uk/objects/co8020835/hand-anemometer-biram-type-1870-1876


つまりこの風速計は「Biram type/ビラム型」とよばれるものであることがわかります。1844年にサウスヨークシャーに複数の炭鉱を所有していたフィッツウィリアム伯爵の執事であった「Benjamin Biram/ベンジャミン・ビラム(1804-1857)」によって発明されました。なお、当店がご紹介しているものと型はほぼ同じですが、メーカーは「F Darton and Company」となっています。




また、アメリカのスミソニアンのサイトにも似た物がありました。

参考:スミソニアンのサイト
"Biram's Patent" Anemometer
https://www.si.edu/object/birams-patent-anemometer%3Anmah_319730

このサイトのものも、わずかにデザインは異なりますが「F Darton and Company」のものとなっています。



推測ではありますが、今回ご紹介するビラム型風速計は、当初は「F Darton and Company」が製造していたが、後には他の会社も製造するようになった、ということなのではないでしょうか。そのうちのひとつが「ヘンリー・ジャスパー・レッドファーン」社である、ということかと思います。レッドファーン社は眼鏡技師をはじめ映画製作にも大きく関わっており、手広く事業を行っていたようですので、このような機器の製造販売も手掛けていたのではないでしょうか。




円形を支えるために渡されたフレームはしっかりとしており、その部分を支えとしてそっと置けば自立も可能。弱い風でも反応し、羽の動きに合わせて目盛りの針もわずかづつ動きます。羽が回る様子を動画としましたので、よろしければご覧ください。





多くの炭鉱夫がこの前を通り過ぎ、より深い坑道へと入っていったことでしょう。そしてこの羽が止まることのないように、管理者たちは気を配りつつ、ひたすら石炭を運び出していった・・・。そんな光景が目に浮かびます。


世紀を超えた英国の炭鉱から来たアナログな機械を、貴方の書斎へと迎えてみる。

カラカラと回る黒い羽根を眺めながら、産業を支えた炭鉱夫たちへと想いを馳せてみるのも一興かと思うのですが、いかがでしょうか。




こちらからも画像をご確認いただけます。

◆England
◆Henry Jasper Redfern
◆推定製造年代:c.1900年代頃
◆素材:箱・木/本体・真鍮、ガラス、他
◆サイズ(本体):本体直径約17.8cm(+ハンドル)
◆サイズ(箱):幅約18.1cm 奥行約18cm 厚み約7.6cm
◆箱含む総重量:830g
◆本体重量:490g
◆在庫数:1点のみ


【NOTE】
*古いお品物ですので、一部に小傷や汚れ、錆びや変色、歪み等がみられます。
*箱には割れや合わせのずれがみられます。箱の留め具は問題なく稼働します。
*詳細は画像にてご確認ください。
*画像の備品は付属しません。
*上記ご了承の上、お求めください。
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526-219

128,000円(内税)

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7月5日(日)
大江戸骨董市
有楽町東京国際フォーラム
*雨予報により中止となりました*


7月11日(土)
大江戸骨董市
有楽町東京国際フォーラム
9−16時
(当店は14時まで)
天候により中止あり
(出店予定)


*8月の出店予定はございません。


【ご注意】
大江戸骨董市は終了時刻が16時ですが、当店は手持出店のため、終了時刻には全て片付けている状態の完全撤収が求められています。当店は細かい物が多く時間がかかるため、2時間前には撤収を開始いたしますので、どうかご了承ください。大江戸骨董市はお早めのご来場をおすすめいたします。